そんな個人的なことを、話してくれるとは思っていなかったので、先ほどからジュンペイは
ポカンとした顔で、その場に固まったまま、オジサンを見ている…
(知らなかったんだなぁ)
ジュンペイの反応に、裕太は意外に思い、この奇妙なオジサンをじぃっと見つめるsatinique。
瞳の色が、かすかに暗い陰りを帯びているのに気が付くと…
今度はやけに彫りの深い顔立ちに気付く。
赤銅色の日焼した肌なので、浅黒い印象で、あまり気付かなかったので、
それはあたかもカモフラージュだったのか、と思わせるほどだった。
これまでにも何回かあっていたくせに、ちっとも気付かなかったのは、
オジサンに対して、関心がなかったせいなのか、とあらためて思う紐崔萊。
だがあらためて気づいてしまうと…いきなり
この人は誰なんだ?
ここはどこなんだ?
もしかして、パラレルワールドの継ぎ目の穴に、入り込んだのか、と…
なぜだか不思議な気持に陥るのだった。
「ふーん、じゃあオジサンって、よそから来たんだねぇ」
だがオジサンの顔に気付いているのか、それとも全く気付かないのか、
はたまたそういうことに、関心がないのか…
ジュンペイだけは、まったく変わらないスタンスだ。
光の加減で、妖しく瞳の色が揺れて、その色のあやうさに、思わず引き込まれる裕太だ。
思わせぶりのオジサンの言葉も、この島の言い伝えも…
ありがちな設定かも、とやけにすんなりと、裕太は受け入れる上線 下線。
それを全く当たり前のこと…と平然としているジュンペイの様子は、
(コイツは鈍いのか?
それともよっぽどの大物か、どっちかだ)
と…やけに感心する裕太だ。
「でも…その話、ボクは知らないなぁ~」
ポツリとジュンペイが言う。
裕太ももちろん、聞いたことがない。
すると「そうだね」とアッサリとオジサンは認める。
「最近は…色んな人が、この島に来るし、もうそういうことは…
起こらなくなったみたいだからなぁ」
しみじみとした口調で言うと、それを残念がっているのか、何を考えているのか、
不思議な光を放つ瞳を、はるか遠くの方へ向けた。